第27回:麻雀といえばあの人。
レーサー岡谷の清老頭で終わった半荘はレーサー岡谷の一人勝ちである。予定通りクリムゾン真鍋が最下位に沈み、巻き添え食ってマイナスに転落したぱぺぽくんもじわっと怒りをためている感じ。
真鍋:半荘3回め行きましょうか、次は岡谷さんを下ろすために、クルムシ軍曹、ぱぺぽくんも当たる相手をよく考えてくださいね。岡谷さんは、みんなで協力しないと倒せないので。
じぇ:私、岡谷さんの後ろで見ときます、なぜ強いのかその秘密を私も覚えたいので。
岡谷:いいよ見てて、でもワシの打ち方は特に変わった打ち方じゃないからな、違いがあるとしたら気迫だ、要するに気合が違うってことだ。
じぇ:なんか、気合を入れる方法があるんですか、普通にしているとそんなに気合が入らないと思います。
岡谷:それは、自分を限界まで追い込むこと、そうすれば不思議な魔性の力が湧いてきて、思い通りの手が作れる。そのためにワシはいつも車の運転でも限界を攻めて気迫を注入しているんだよ。
じぇ:車の運転と大きく関係があるんですね、それはすごい。
岡谷:勉強でもそうだ、ワシは高校、大学と、いかに勉強せずに合格するか、それをとことん追求してきた。ガリガリ勉強していい学校に入るのは当たり前、なにも感動を呼ばん。いかに勉強時間を極限まで絞り込んで空いた時間はパチンコで英気を養い、そうして麻雀に立ち向かう。そうすれば魔性の力を纏うことができる。
クル:クリムゾン真鍋、なんだか、俺って大変な人と麻雀してる気がしてきました、どうみても勝てそうな気がしない。
真鍋:それは、すでに君が岡谷マジックに毒されているからだ、気をたしかに持て。相手は鬼でも悪魔でもない、普通の人間だ。気迫に飲まれないようにな。
クル:じぇーんさん、さっきのココ茶、もう一杯いただけますか、なんかあれ飲むと心が落ち着くような気がして。
岡谷:ドーピングはチョンボですよ、男たるものインチキせず正々堂々と戦うのがスジであろう。
真鍋:正々堂々と戦って、岡谷さんの肥やしになるのが男の道ってもの。松本零士先生もおっしゃっている。男には負けるとわかっていても戦わなければならないことがあるのだ。今がその時、ためらわなくていい。
じぇ:そうですよ、ココ茶とかインチキしないで、壮絶に散ってくださいね、クルムシさん。
クル:はい、ではそうすることにします。
真鍋:じぇーんちゃん、私に普通のお茶をください。あと、ここのトレイは銀製で錆びやすいので、乾くまでしばらく持っててくれますか。
じぇ:ここで持っていればいいんですね。
真鍋:はい。
クル:では、二度ぶりで私がサイコロを…。ぱぺぼくんですね、次にふるのは。
ぱぺ:ぴきぴき、チンチロ。
岡谷:おお、魅入られたようにワシに出親が来たな、さすがぱぺぽくん、モノの道理がわかってる。ということで、アリアリで行きます。
真鍋:ぱぺぽくん、なんてことしてくれたんだ、岡谷さんがこれで疾走してしまうぞ。
ぱぺ:ぴきぴきぴき。
真鍋:テメーはそれでいいよ、仕方ない。タンヤオのみで8回連続上がって終わりにするよ。クルムシ軍曹も協力頼むよ。
クル:それがいい気配ですね。でも、こっそりクリムゾン真鍋が岡谷さんに役満直撃食らうところも見てみたい気もします。
真鍋:ヲイヲイ。
宣言どおり、鳴きタンばかりのせこい手で上がり続けるクリムゾン真鍋。あまりのセコさにレーサー岡谷の機嫌が悪くなる。
真鍋:クルムシ軍曹、それロンです。タンヤオのし、1000点です。
クル:またですか、せこい上がりですね。
真鍋:いいんだよ、岡谷さんを止めるのにはこれしかない。
クル:まあ、仕方ないんですかね、私としてはもっと気迫あふれる試合を希望なんですが。
岡谷:しかし、なんだかクリムゾン真鍋、絶好調だな。なにか不思議な力が取り憑いたかのように。
岡谷さんの言葉にぎょっとするクリムゾン真鍋。そのときぱぺぽくんが急に喋りはじめる。
ぱぺ:まだ麻雀やっとるんやんけ、さっさと麻雀終わらせて熊の謎考えよう。途中まで八熊伝読んだが、なかなか興味深い話があるやんけ。
真鍋:またでたな、ハンター竜田。いま大事なところだから邪魔しないでくれ。岡谷さんと戦うのは精神を集中せねばならん、いまはかろうじて踏みとどまっているところなんだが風水を乱されるといきなりバランスが崩れる。
竜田:なんや、またいつものインチキやっとるやんけ。どうせ、じぇーんちゃんに銀細工のトレイもたせて強いやつの後ろに立たせて、手牌をのぞくとかやってるやんけ、せこいことして勝っても意味ないから、さっさと払うもん払って熊の話始めるやんけ。
クリムゾン真鍋のインチキを竜田にバラされて挙動不審になるクリムゾン真鍋。
クル:そんなセコいことしてたんですか、クリムゾン真鍋。まあ、驚きはしませんがね。
岡谷:ワシは実は知っておったよ、クリムゾン真鍋がセコい手を使っていることを。まあ、ワシの手牌は大事な部分は見えないようにしていたから大して役には立っていないと思うが。
じぇ:私のトレイがそんな意味があるとはぜんぜん気が付きませんでした。
岡谷:ということで、ワシが親だな。これからは伏せ牌で打たせてもらうよ。
牌を全く見ないで、伏せたまま打ち続けるレーサー岡谷。
クル:すごいですね、見なくても打てるなんて。
岡谷:それは車の運転でも同じだよ、つぎのコーナーから対向車がくるかどうか、見なくても心の目を開けばおのずからわかる。ということで、クルムシさん、それロンです。
クル:ぎえ。
岡谷:安いよ、安め振り込みだ。三色一盃口のマニガニです。
クル:鳴かないから安心していたら、そんな手を作っていたんですか。
岡谷:まだまだ、ワシは勝ち続けるよ、これはほんの序の口。
伏せ牌のまま勝ち続けるレーサー岡谷。特に2回連続で直撃食らったぱぺぽの様子がおかしい。
岡谷:ロンです、ぱぺぽくん、リーチドラ5、ハネマンです。
ぱぺ:ぴきぴきぴき。
クル:どうやらぱぺぽくんが怒りのあまり暴走を始めたようですよ、どうしましょうか。
ぱぺ:ぴきぴきぴき、ぴきぴきぴき、ドカン。
真鍋:あ~だめじゃないか、麻雀卓ひっくり返したら。これが有名なちゃぶ台がえしですね。どうやら電動卓のセンターの部分が床に落ちた湯呑と衝突して変形してる、そこ一番微妙な構造なんだけど。
クル:どうやら故障したみたいですよ、ボタン2つ同時に押しても蓋が開かなくなりました、ということでこの半荘は故障によりノーコンテストということで。
岡谷:それはワシが許さんよ、こういうこともあろうかと、普通の牌セットも用意してきた。それで続きをやろう。
段取りよく、黒いケースに入った普通の麻雀パイをテーブルに広げ始めるレーサー岡谷。
ということで、手積みで半荘を継続することになった4人。
クル:しかし、手積みで麻雀というのはいいですね、このかき混ぜる音が萌えます。
岡谷:ワシもそう思う、牌が混ざっている音はいいもんだね、クルムシ軍曹。
淡々と進む半荘、ぱぺぽくんが細かく振り込んだまま、ぱぺぽの親の順番に。
ぱぺ:ぴきぴきぴき。
岡谷:ええぞ、ぱぺぽくん、行ってええぞ。
ぱぺ:ぴきぴき、キョン。
クル:ええ。なんですって、もう上がってるって。
ぱぺ:テンホーです。
真鍋:あれ、いまなんかぱぺぽが普通に喋ったような気がするが…。
クル:ほんとテンホーみたいですよ、これ、どう見ても上がってます。ねえ、岡谷さん。
岡谷:他の人の目はごまかせても、ワシの目は誤魔化せんよ、これは積み込みましたね、電動卓ひっくり返して破壊して、手積みにしていきなりテンホー、これはインチキですな。
ぱぺ:いったいなんの根拠があってそんなことをいうんだ、状況証拠を積み上げても証明したことにはならん。
真鍋:こここ、この声は、ニンジャ花咲、そうだろ、花咲。
花咲:よくわかったな、俺が麻雀を心から愛しているのは知っているだろう、その俺を呼ばずに麻雀を始めるとは不届き千万。よって、俺はパペポを使って参加することにした。
真鍋:道理で打ち筋が急に変わったと思った。
花咲:さっきハンター竜田がぱぺぽに混信したときがあっただろ、あのときにニンジャの技で接続パスワードがわかったわけだ、それ以降はぱぺぽは意のままに操れる。
クル:岡谷さん、どうします。またメンバーが変わったみたいですよ。
岡谷:イカサマであろうと上がりは上がり、ワシは気持ちよく16000点払わせてもらうよ。それよりも、ワシはいま猛烈に感動している。最近手強い相手に恵まれなかったが、どうやらこの花咲という男、凄腕の雀士だな、強い相手とお手合わせするのは願うところだ。
クル:僕は飛びそうですよ。今回は飛びなしルール、とことんマイナスが溜まっていきますね。
ぱぺ:ぴきぴきぴき。
真鍋:あれ、ニンジャ花咲は戻っていったかな、ぱぺぽくん、サイコロ振ってね。
ぱぺ:ぴきぴき、ポン。
クル:あれ、また自五がでそうだったのに、なんか急に目が変わりましたよ、なんでだろう。
真鍋:それは、いま岡谷さんが見えないスピードでサイコロが落下する瞬間に風を送って目を変えたからだよ。秘技、賽の目返し。
ぱぺ:ぴき。
クル:ぱぺぽくん、いきなりドラ切りですね。では私もドラを切って。
岡谷:ではワシの番だな、積もって、おお、計算通りだ、チーホー、役満です。
真鍋:なんだ、またインチキか、やってられないな、この麻雀。
岡谷:積み込んだのはワシではないよ、ぱぺぽくんだ。テンホーになる予定の配牌をちょっと調整してだな、なんだかうまく行った。
ニンジャ花咲に乗っ取られインチキ技を炸裂させる麻雀ロボット、それすらも人間の技で跳ね返すレーサー岡谷。
クル:僕はいま、猛烈に感動しています。岡谷さん、素晴らしい。
じぇ:岡谷さん、凄いです。
まあ、岡谷さんと麻雀を始めた時点で負けることは決まっていたこと、特に驚きはせんな。
岡谷殿、貴君とはいずれ、直接相まみえることもあろう、その時の勝負を楽しみにしている。
結局、正攻法でもインチキでも麻雀ではレーサー岡谷に刃が立たなかったクリムゾン真鍋。麻雀はこれくらいにして次回は八熊伝の謎を解きにハンター竜田の村に向かうのである。
第26回:麻雀はメンバーが大事
いよいよ、レーサー岡谷との麻雀にクリムゾン真鍋が参加、じぇーんのカタキを取ることができるのか。
真鍋:では、始めましょう。二度振りでぱぺぽくん行ってください。
ぱぺ:ピキピキ…。
真鍋:おやま、私が出親ですな、では、ルールを決めます。ナシナシ、東南、ワレメも無しで。
岡谷:ナシナシですか、ナシナシはチョンボじゃないか。
真鍋:岡谷さんがさっきのラストで、いきなりタンヤオドラ12やるから、安心してナシナシにできます。我がルール決めに一片の悔い無し。
岡谷:まあ、決まったものは仕方ないな。
真鍋:では、始めます。サイコロは5で自五、私の山から行きます。
クル:いきなり、自五とは、なんか積み込みましたか。なにかの本に書いてました、親がいきなり自五は怪しいって。
真鍋:大丈夫、これは全自動卓だから積み込みは無理だ、クルムシ軍曹の情報は30年古いんじゃないか。
クル:いつも、スマホでネット麻雀だけやっているので、積み込みって言ってみたかったんです、深い意味はありません。
ぱぺ:ピキピキ…。
岡谷:しかし、こういうときに限って、ドラがたくさん来るのに役がない。ナシナシはやりにくいな。
真鍋:それが狙いですから、しかたなかばい。
ぱぺ:チーです。
真鍋:あれ、ぱぺぽくん、ナシナシでそんなに鳴いて大丈夫かい。
クル:場を見る限り、萬子ためてるんじゃないでしょうか、無理ホンイツ、オタ風ですかね。
ぱペ:ポンです、7萬。
岡谷:やはり、ぱぺぽくんはホンイツかな。
ぱぺ:緊急着信あり、緊急着信あり。ぱお~ん、ぱお~ん。
真鍋:なんだなんだ、緊急着信とは、キトラ古墳にUFOでも着陸したか…。
ぱぺ:ワシやワシ、竜田やんけ、八熊伝がうちの蔵から見つかったやんけ、桐の箱に入れて大事に保管されていたから、問題なく読める。はやく取りに来るやんけ。
真鍋:なんで、ぱぺぽくんが竜田の代わりに話をするんだ。
じぇ:それは、ぱぺぽくんの親切機能で、近くのスマホに着信があった場合、Bluetooth通信で、ぱぺぽくんのスピーカーから内容を聞くことができる機能だそうです。
真鍋:ええ、それって、秘密の会話もぱぺぽくんに全部筒抜けなのでは、まずいぞ、それは。
じぇ:ぱぺぽくんが作られた時代は、まだチップに盗聴機能を組み込むことに規制がなかった時代なので、仕方ないですね。さっきも、私のママからの通話をいきなりぱぺぽくんが話し始めたときにはびっくりしました。
真鍋:どうりで、ぱぺぽくんは麻雀が強いはずだ、空中を飛び交う電波を全部味方につけることができるんだからな。ということで、どうだ、最後の7萬、ほら当たってみろ。
岡谷:なんと無謀な、クリムゾン真鍋はいつも気にせず危険牌を通してくれるから助かるな。
クル:すみません、それロンです。タンピン一盃口ドラドラ、ハネマンです。
真鍋:やれやれ、そっちから来たか。
ぱぺ:クリムゾン真鍋、メッセージは伝えたよ、ということで八熊伝のコピー、早く取りに来るやんけ。
真鍋:はーい分かった分かった、麻雀終わったらすぐに行くよ。ということで、1万2千点、もってけ泥棒。
ぱぺぽの新機能に調子を崩し、振り込みまくるクリムゾン真鍋。あっというまにオーラス。
岡谷:オーラスですな。今の持ち点は、クルムシさん+31、ワシ+5、ぱぺぽー20、クリムゾン真鍋-28。
真鍋:オーラスだ、ラス親は…。おやま、私と同じく負けているぱぺぽくんすか、ここは、素直に私が最後に役満でも上がって終わりたいものだ。
クル:なんか、静かにこのまま終わって欲しいですね。1000点とかで軽く上がることにします。
残り牌が12枚になったところで、岡谷が動く。
岡谷:1筒子、ポンです。
真鍋:なんか嫌な空気ですな。ナシナシで岡谷さんがポンなんて。
クル:ぼくが先に1000点であがるから大丈夫です。
真鍋:それを期待しているよ、岡谷さんを勢いつかせると後で困るしね。
くる:そうですね、では9筒子、切ります。
岡谷:ロンです、いきなり出ましたか、クルムシさん。やはり出ると思ってました。ということで、清老頭、役満で3万2千点よろしく。
くる:きゃ~、ホントですか、端牌を手の中にたくさん持ってたんですね、信じられません。
真鍋:クルムシさん、魅入られたように振り込んだね、こわいこわい。ぱぺぽくんはなんか感想はありますか。
ぱぺ:ぴきぴき。
岡谷:では精算しましょう、いまのでクルムシさん、飛びましたね。飛び-10入れてー41、ワシ+89、ぱぺぽー20、クリムゾン真鍋-28。
真鍋:やっぱり来ましたか、やはり岡谷さんは手強い相手ですね。
ぱぺ:ぴきぴきぴき。
ぱぺぽくんが怒ってるみたいですよ。次は本気出すと言ってます。
ぱぺぽくんも微妙に怖いな、変なチップとか入ってそうだし。
いきなり、レーサー岡谷が役満で疾走開始、ぱぺぽくんの逆襲はどうなるのか、荒れ模様の麻雀は次回に続きます。
第25回:橿原神宮で戦闘開始
クリムゾナーとのER2023、服部名人と久しぶりの再会を終えてそそくさと橿原神宮前のホテルに戻るクリムゾン真鍋。
真鍋:予定より1時間遅れで帰ってきた、予想以上にココ茶が長時間効いてレーサー岡谷さんとクルムシ軍曹が眠っていてくれればいいんだけど…。
恐る恐る部屋を覗くクリムゾン真鍋。その時、「ロ~~~ン」と元気のいい声が聞こえる。
じぇ:クルムシさん、その六萬、ロンです。安目だけど上がっておきますね。
クル:それですか、じぇーんさん、その前に三萬九萬の筋牌切ってるから安全だと思ったのに、五萬七萬のカンチャン待ちとは厳しいですね。
じぇ:筋牌ってなんですか、とにかく上がればいいんでしょ。
岡谷:そうそう、麻雀は上がってなんぼ、振込が怖くて麻雀が打てるか、クルムシさん、ビビったら負けですよ、ビビったら。
真鍋:みなさん、麻雀楽しんでますか。じぇーんも立派に代打ち務めてるみたいだね。
クル:じぇーんさん、酷いんですよ、さっきから僕に直撃ばかりで、なんか恨みでもあるんでしょうか。
じぇ:クルムシさん、他の2人にくらべて弱そうだから…、ついそちらから当たることになってゴメンナサイ。
真鍋:現状のスコアはどうなんだい。てっきり岡谷さんの一人勝ちかと思ったが。
岡谷:ワシは、安い手は上がらんよ、じぇーんさんは、3900とかの手を何回か上がって、今のところ+22でトップ、ワシとパペポは配給原点、クルムシさんが-20、そんな感じだ。
じぇ:そろそろ交代しますか、マスター。勝ち逃げで交代は気分いいですしね。
真鍋:ちょっと歯を磨いてくるから、あと1局打っといて。その後交代するから、トップを守っといてね。
岡谷:じぇーんさん、最後の1局ですな。勝ち逃げは許さんよ、最後にキツ~ィお仕置きを楽しみにしておいてください。
じぇ:キャー、怖い~。
最後の1局、パペポが親で淡々と進む。ホテルの歯ブラシで念入りに歯磨きをするクリムゾン真鍋。
じぇ:ポン、西も鳴いていいんですよね。
クル:おや、じぇーんさん、すでに南と北、鳴いてますね、まさか、東とか手の中に持ってませんよね。
じぇ:なんか、黒い字が書いているこれのことかな、内緒です。
クル:思いっきり喋ってますね。これは、やばい雰囲気だ。
じぇ:黒い字の牌が4種類揃ったらいいことあるんですか。
クル:それは四喜和といって、かなり危ない役です、中単騎とかで待たないでくださいね。さっきから直撃ばかり食らってるからなんか縁起悪いな。
そういいながら、赤色の中を切るクルムシ。
岡谷:くるむしさん、それはよく通したな、ワシも切りたかったが切れんかったよ、ということで、中。
真鍋:しかし、場が重いな、これまで二翻の役ばかりで上がっていたじぇーんが、四喜和とはね、頑張れじぇーん。
淡々と、局が進む、独特の緊張感で空気が重い、じぇーんが、ツモった牌をそのまま切ると。
岡谷:じぇーんさん、ロ~~~~~ン。それだ、それを待ってた。
じぇ:きゃ~、なんだか高そう。
岡谷:まんしゅうデス…。と言いたいところだが、実はもう少し高い、タンヤオドラ12、数え役満には一役足りん、ただの三倍満です。ということで2万4000点払ってください。
じぇ:せっかく細かく貯金していったのに、全部持っていくなんて酷い…。
岡谷:ワシは下手くそや、そこでドラをあと一枚待てんところが下手くそや。
真鍋:最終局で逆転するところが岡谷さんの麻雀の怖いところ。謙虚に下手くそと言いながら、これまで何回、痛い目にあってきたか…。
岡谷:まだまだ、これくらいは序の口、ワシはまだまだ勝たせてもらうよ。
じぇ:マスター、あとはよろしくお願いします。
真鍋:岡谷さんには逆らわないのが一番。
岡谷:ワシは怖くないよ、じぇーんさん、なかなか筋がいいな、また次の機会にもお手合わせ願おう。
岡谷さんに褒められるなんて嬉しい、またお願いします。
カモ一羽、完成って訳ですね。
真鍋:では、いよいよ私の登場ですな、久しぶりに岡谷さんと真剣勝負。岡谷銀行に預けてある私の諭吉兵、返してもらおう。
岡谷:いよいよ試合開始、腕が鳴るよ。
真鍋:私が出親なら、なしなしルールでやらせて貰おう、最終局のタンヤオドラ12をなにがなんでも阻止しないといかん。
ということで、蒲田でのクエストを終えて橿原神宮前に戻ってきたクリムゾン真鍋の前に、レーサー岡谷が立ちはだかる。はたして、身ぐるみ剥がれるか、レーサー岡谷を返り討ちにするか、次回に続く。
第24回:伝説の名人が登場か。
ER2023(エコール老人会)も無事に終わり、また現実に戻るクリムゾン真鍋。
真鍋:そろそろ、中断している麻雀を再開しないといけないな。ココ茶の有効期間は8時間、レーサー岡谷さんが目覚めるまであと3時間、蒲田から羽田空港までは30分で行ける。全ては計画通りだ。
謎の人:おや、そこにいるのは真鍋さんではありませんか、久しぶりですな、15年ぶりくらいですか。
真鍋:おお、これはお久しぶり、服部さんではありませんか。蒲田だから服部さんにお会いするのも有り得る話だけど、ここでお会いできるとは思いませんでした。
服部:蒲田駅の西口にはよく来るよ。
真鍋:蒲田は以前大鳥居にあったセガの本社から近いですからね、セガ関係者がいまもたくさんいらっしゃいますよね。
服部:せっかくだから、ちょっと飲みましょうか。知ってる店がこの近くにあるので…。
真鍋:では、5分お待ちください、次のスケジュールを調整しますので。ということで、じぇーんに連絡、連絡…。
じぇ:マスター、そちらは順調ですか。あと3時間でココ茶の効果が切れて目覚めるはずですが、それまでに帰ってこれますよね。
真鍋:ここまでは順調だったんだが、ちょっと昔の大事な知り合いに会ってな、これから飲みに行くから、そちらに戻るのは4時間遅れる予定だ。
じぇ:4時間ですか、では、ココ茶を追加して、あと3時間眠らせておきますね。でも延長はこれが最後ですよ。ココ茶は危険ドラッグではないですが使いすぎるといろいろと差し障りがあります。
真鍋:わかった、気をつけよう、それにしても1時間足りないじゃないか、そのときは、じぇーんが代打ち頼むよ。
じぇ:イエッサー、負けた分はマスターの負担で…。麻雀はほとんどやったことないのですが安心して打てます。
真鍋:目覚めてから1時間後くらいには着くはずだから、それまでできるだけ負けの被害を少なく頼むよ。
じぇーんに、麻雀の調整を依頼し、ホッとするクリムゾン真鍋。
服部:段取りは付きましたか、では早速行きましょう。
服部名人とは、かつてインベーダーの腕が日本一といわれていた、伝説のインベーダープレイヤーである。スペースインベーダーの黎明期に、タイトーの服部名人としてゲーム界に君臨していた。
服部:デスクリムゾンが発売されたのが1996年の8月、あれから30年近い時間が経ったが、あっという間だったね。
真鍋:もう、そんなになりますか、当時セガでエコールの担当をしてただいたのが服部さんでした。服部さんのお力がなければ、デスクリムゾンはセガの品質管理に引っかかってリリースできなかったはずですね。
服部:そうそう、あれは相当なできだったよな、私以外のセガの関係者は全員、リリースに反対していたんだが、真鍋社長の熱意を感じたんで、周囲を説得してリリースにこぎつけたわけ。クソゲーとして叩かれるのは予想していたが、逆にそれで人気が出るとは全く想像外だった。
真鍋:そうなんですね、私は結構自信をもってリリースしたんですが、どうやら世間の評価は違っていたみたいですね。
服部:まあ、結果として世間に評価されたんだからいいんじゃないか。
真鍋:あれから30年近くゲーム作ってきましたが、どうやら私の代表作はデスクリムゾンになることが確定的ですね。
服部:代表作があるだけ、よいことだよ。
真鍋:以前、服部名人として有名だった服部さんは、ネット世界では行方不明の名人という扱いになっていますね、このあたりで服部さんの消息を公開していいでしょうか。
服部:それは問題ない、服部名人として有名だったのはタイトー時代、タイトーの服部名人として認識されていたな、その後サミーに転職してセガに出向していたが、サミーがセガを買収してサミーのゲーム部門とセガのゲーム部門が合併したときに、正式にセガに転籍したわけだ。
真鍋:まさに、ゲーム業界の激動を生き抜いてきた、ゲーム業界の生き字引とでもいいますか。
服部:セガでは最近まで、部長をやっていたよ。世間では行方不明と言われているみたいだが、セガで堅実に仕事をしてきたわけだ。
真鍋:そういえば、インベーダーの腕はいかがですか。何十年か経ったとはいえ、世界最高レベルの腕はまだ健在なのでは。
服部:腕もさることながら、スペースインベーダーはなかなかよい筐体が残っていないね、レバーの状態で大きくスコアも違ってくるし。
真鍋:そうですよね、ゲームにとってコントローラーの感触は大事ですよね。名古屋撃ちとかされてましたか。
服部:名古屋撃ちは、あまり趣味ではないね。1ドットの隙間を狙って、ギリギリ躱しながら、敵を倒すスタイルだった。
真鍋:ぜひとも、服部さんのスペースインベーダーのプレイを見てみたいです、レジェンドの腕をぜひ拝見させてください。
服部:お台場のジョイポリスのビル2Fにあるレトロゲームセンターにスペースインベーダーの筐体が現存しているらしい、それをプレイしてみようか。
真鍋:年が開けて、もろもろ落ち着いたら、ぜひレトロゲームセンターでインベーダーのプレイやりましょう。デスクリムゾンの有力プレイヤーとインベーダーで服部名人が対決とか、考えただけでワクワクします。
服部:我々は、ゲーム業界の黎明期からいろんな経験をし、珍しいエピソードもたくさんある、これを後世に残したいものだね。
真鍋:では、ぜひこのニンクリ物語でも、服部さんの経験を次世代に伝えましょう。きっとみんな喜ぶと思います。
蒲田で服部名人と久しぶりに話をするクリムゾン真鍋。蒲田の夜が更けていき、レーサー岡谷との麻雀のことをすっかり忘れてしまったクリムゾン真鍋。
いや、久しぶりに服部名人と飲めて嬉しかった。そういえば服部名人と写真とるの忘れたな。
ココ茶が切れたから、私が代打ちしておきますね。
じぇーんの代打ちに、かすかな不安を感じながらも、機嫌よく蒲田をあとにするクリムゾン真鍋。次回はついにレーサー岡谷との麻雀対決が始まるのか、
第23回:おおっと、大事なこと忘れてた。
橿原神宮前のホテルに戻り、おもむろに麻雀の準備を始める4人。
真鍋:麻雀するとして、道具を用意しないといかんな。でもそう簡単には麻雀セットは用意できないよな。
岡谷:大丈夫だ、ワシのRX-7は特別仕様でな、後部座席を移動すると、全自動麻雀卓が積めるようになっている。ほれ、これが、日本の誇る全自動麻雀卓、雀鬼だ。椅子もあるよ。
真鍋:なんとまあ、ただの走り屋のための車かと思ったら、密かに全自動麻雀卓を輸送できるように改造していたとは、恐るべし、岡谷はん。
岡谷:まあそんなもんだ、では、クルムシ軍曹も一緒に麻雀道具を部屋に運び込んでくれ。
くる:了解です、では早速。
じぇ:私、全自動麻雀卓って初めて見ました。ちょっとだけ、やってみたい気もします。
真鍋:だめだめ、じぇーんは、岡谷さんの強さを知らないから、そんな呑気なことが言えるんだ。身ぐるみ剥がれて、海外に売り飛ばされる未来しか見えないぞ。
じぇ:今でも、海外に売りとばされたみたいな状況なので、あまりかわりがありません。
真鍋:とにかく、絶対に駄目だ。おや、もうすでに準備ができてるな。最後にパペポくんを設置するとこれで完成だ。
レーサー岡谷、クルムシ軍曹、麻雀ロボットのパペポくん、それにクリムゾン真鍋と、4人のメンバが揃い、麻雀が始まろうとするところだったが…。
じぇ:マスター、そういえばマスターは覚えてますか。今日は年に一回のデスクリムゾンファン、つまりクリムゾナーが集ってミーティングを行う日、15時から招待されているはずでしたよね。
真鍋:ぎょえ、忘れてた。あと4時間しかない、ダブルブッキングだな、困った困った。
岡谷:麻雀はすべての予定に優先する、神聖なる遊び、抜けは許さんよ。
真鍋:どうしよう、じぇーん。ファンミーティングに行かないとファンクラブが崩壊してしまうかもしれないな。
じぇ:マスター、ここは、私に考えがあります、任せてください。
そう言いながら、お茶の準備を始めるじぇーん、美味しそうなお茶が次々と入っていく。
じぇ:皆さん、麻雀の前に、私の故郷で名物のココ茶をお召し上がりください、頭がスッキリして麻雀に勝つこと間違いなし。
真鍋:全員に飲ませたら、意味ないんじゃないか、全員のレベルが上がるだけだと思うが。
じぇ:じゃあ、マスターは飲まなくていいです、どうせカモになるんだから飲んでも飲まなくても同じということで。
真鍋:わかった、じゃ、ココ茶は絶対に飲まん。
暫く経つと、レーサー岡谷と、クルムシ軍曹の寝息が聞こえる。
じぇ:うまくいきましたね、マスター。これで8時間は目を覚まさないはずなので、その間にファンミーティングに行ってきてください。
真鍋:助かるよ、じぇーん。では、行ってくる。
近鉄特急を乗り継いで、関西空港に向かう、クリムゾン真鍋、ラッキーなことにちょうど出発直前の飛行機に乗り込むことができ、ホッとする。
真鍋:13時の飛行機に乗れた、羽田空港に14時15分には到着するな。で、クリムゾナーのミーティング場所はと…、なんと好都合、去年までは新橋だったが、今年は蒲田駅の近くだ、なんというラッキー。15時からだからなんとか間に合う気がする。
こうして、クリムゾン真鍋は滑り込みで、蒲田にて開催中のクリムゾナーのミーティング、ER2023に間に合ったのである。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
真鍋:ER2023の会場はここですか。
閣下:お待ちしていました、社長、じゃない、クリムゾン真鍋。いつも時間に正確ですね。
真鍋:そうだな、日頃から時間には余裕をもって行動し、遅刻して迷惑をかけないように30分前には着くようにしているからね。
閣下とは、ファンミーティングの取りまとめを数十年に渡って大阪さんとともに辣腕を振るってくれる、コンバット老人、別名デスクリ閣下のことである。
閣下:本日は皆さん、ER2023にお集まりいただきありがとうございます。ERとは、エコール老人会の略ですが、今年で23年目になります。
真鍋:エコール老人会も、23年になるんだな、デスクリムゾンが発売になったのが1996年だから27年前、月日の経つのは早いものだ。
大阪:今日のメインコンテンツは、ビーフンのフルコースです。越前康介の大好物、焼きビーフンにちなみ、すべての料理をビーフンで揃えました。
真鍋:それはすごい、ビーフン天国、英語でいると、ビーフンヘブン、なんだかゴロが良いな。今年のミーティングはビーフンヘブンの年として永遠に語り継がれるであろう。
大阪:では、早速料理を。
真鍋:おお、これはうまい、デスクリムゾン2で亡霊となって異界を彷徨っている越前様もお喜びになるだろう。
閣下:今回は、久しぶりにMatさんがズームで参加しています。
真鍋:おお、これは久しぶりMatくん。デスクリムゾンリンクは、ファンにとって重要なコンテンツだったね。
真鍋:23年も経つと、みんないろんなことがあるが、こうやって年に一度、集まれるとは嬉しいことだ。それはそうと、秋はファンミーティングだが、春にはエコール主催でなんかサバイバル系のイベントをやりたいものですね。
閣下:それは賛成です。どこに行きましょうか。
真鍋:横須賀の猿島に行こうか、戦艦三笠を見学して、猿島で友ヶ島のようなムービー撮影場所を探索し、横須賀海軍カレーを食べて帰ってくるというのはどうだろう。
閣下:それはいいですね。
真鍋:閣下の賛同が得られたということで、じゃあ、来年の春頃にはサバイバルイベント、デスモンキーアイランドをやることにしましょう。
ということで、突然サバイバルイベントが開催されることになって上機嫌のクリムゾン真鍋。
真鍋:そういえば、チョモランマ桐も今回は一緒に来ているんだ、なんか挨拶しろ。
ちょ:こんばんは、私が麻布高校柔道部1号生のチョモランマ桐である。
真鍋:江田島平八風の挨拶だな、元気があってよろしい。
ちょ:プロフィールの写真が後ろ姿だったので、ここで撮った写真に差し替えましょう。
真鍋;おお、なかなか強そうでいいな。早く黒帯とってくれ。
ちょ:私が麻布高校柔道部1号生のチョモランマ桐である!!!
真鍋:せっかくだから、記念撮影しよう。チョモと私以外はボカシかけといたから。
集合写真も無事に撮影でき、このように大阪・十三の猫居酒屋と、蒲田の会場をオンラインで結んで和やかに進行するER2023であった。
今年はデスクリムゾンの守り神であるコンバット越前がまた大活躍することになります。
ユニティのプログラムをガンガン進めないといけないね。
ER2023のあまりの居心地の良さに、橿原神宮前のホテルで麻雀をしている最中なのをすっかり忘れてしまったクリムゾン真鍋。ココ茶が切れる6時間で果たして麻雀メンバーに復帰することができるのか、次回をお楽しみに。
第23回:おおっと、大事なこと忘れてた。 Read More »
第22回:ここでそれが来るか!
橿原神宮前のホテルに泊まって、石舞台で踊る三匹の熊について考えるクリムゾン真鍋。眠れないまま、朝を迎える。
真鍋:どうも最近、身辺でややこしいことが多い。なぜだろう。ファイティングクライマックスのプロジェクトが終わって以降、静かに平和に暮らしていたのに、なぜ騒動が多いんだろう。
じぇ:もともと騒動が多かったんじゃないですかマスターの周辺は。でもこれまではマスター持ち前の鈍感力で気がついていなかっただけで…。最近のマスターは、鈍感力が減ってきている気がします。
真鍋:まあ、以前よりは周囲に気を使うようになってきていることは確かだ。昔はコンピューター無しブルドーザーだったのが、最近はコンピューター付き一輪車みたいな感じだけど。
じぇ:一輪車って見たことないです。興味ありますが…。
真鍋:こんな感じだ…。最近見なくなったな。
じぇ:凄い、カッコいい。
真鍋:じぇーんの趣味はもうひとつ理解不能だな。じゃあ、朝食を食って橿原神宮に参拝してくるよ、ここは神武天皇を祀った、日本の原点みたいな神社だから。心して参拝しないといけない。まずは、風呂に入って…。
風呂に入って身を清めて、朝食会場でもらってきた、茹で卵用の塩を全身にふりかけて身を清めるクリムゾン真鍋。
真鍋:しかし、凄いな、橿原神宮は。この荘厳さは、まさに日本の原点。ここから日本は始まったと言っても過言ではないな。明日香村には日本の心がたくさん詰まっている感じだ。
橿原神宮の威圧的な佇まいに感動するクリムゾン真鍋。
謎の人:おお、そこにいるのはプレジデント真鍋ではありませんか。お久しぶりです。
真鍋:(昔の名前で呼ぶとは、こいつは一体何者だ。)私は、今はクリムゾン真鍋だ。もう昔の名前で呼ばれても返事するのは最後にするよ。で、君は誰だ。
謎の人:昔はクルムシ二等兵と呼ばれていましたね、貴方に。もう15年くらい前ですが。
真鍋:おお、久しぶりじゃないか、クルムシくん、いまでも二等兵なのか。
クル:クルムシという名前は私が考えましたが、二等兵と決めたのはクリムゾン真鍋社長でしょう。
真鍋:じゃあ、せっかくだから、これからはクルムシ軍曹と呼ぼう。ハイドラGPでは随分と助けてもらったね。
クル:だいぶ忙しかったですが、楽しいプロジェクトでした。随所で開催されている格闘ゲームの店舗大会に勝手にポイントを付けて、商品と賞状をだす仕組みはなかなかうまく行きました。
真鍋:諸般の事情で、ハイドラGPは最終戦を行えないまま、活動停止してしまったのが残念だけど、HPはまだ残しているし、いつか再開したいものだ。
クル:賛成です、そうしましょう。
真鍋:で、なんでクルムシ軍曹は橿原神宮にいるんだ。まさか、クロニン軍団の手先になって私を監視に来たとか。
クル:クロニンってなんですか。それにもし監視に来たなら、こっそり隠れているでしょう。クリムゾン真鍋に見られるということは、隠れているわけではないと思うのですが…。
真鍋:そりゃそうだ、相変わらず気が利くよね、クルムシ二等兵、じゃない、クルムシ軍曹は。
久しぶりの再会に、昔話に花が咲くクルムシ軍曹とクリムゾン真鍋。
ゴゴゴゴゴ、グオ、ガギャン。轟音ともに、橿原神宮の駐車場でRX-7が現れる。
くる:あの音は何でしょうか。
真鍋:あれは私の友人のレーサー岡谷が来た音だな、なかなか楽しいヤツなので、クルムシ軍曹にも紹介するよ。
岡谷:真鍋はん、そろそろなんかしましょか。メンバー集めるために箕面まで行ってきたが、今日はあいにく、秋祭りの時期でな。みんな神輿を担いだり、神木を運んだりで忙しいんだ。メンバーに心当たりはないかな。
真鍋:まあ、時期が時期だけに、みんな秋祭りで忙しいよな。
岡谷:で、ワシの知り合いが、大学でロボットの研究をしていてな、そこで作ったロボット、それが、このパペポくんだ、これを借りてきたから。なんでも、麻雀の相手をするためだけに開発されたロボットらしい。
真鍋:それって、寿司屋の受付でテーブル番号を発券していたペッパーくんによく似ているんだが。
岡谷:まあ、近い存在ではあるよ。ペッパーくんって故障が多いから、胡椒になって、ペッパーくんという名前になったとワシは考えているが、このパペポくんは、ほとんど故障しないらしい。なんせ、麻雀することだけに特化したロボットだからな、故障が少ないらしい。
真鍋:負けそうになったら、麻雀卓ひっくり返してリセットする機能とか付いてないよな。
岡谷:パペポくんと麻雀するのは、実はワシも初めてだ。強いのか弱いのかわからんよ。
真鍋:まあ、岡谷さんより麻雀強い人は見たことないから、パペポくんといえども、岡谷さんには完敗するだろ。で、メンバー三人だから、今日は三人打ちでやりますか。
岡谷:ワシは三打ちはやらんよ、三打ちはインチキだ、麻雀はありありの4人打ちだ。
真鍋:そりゃ残念、あと一人見つかるまで、麻雀は保留ということで。
なんとかレーサー岡谷との麻雀を回避しようと無駄な努力を続けるクリムゾン真鍋。
岡谷:それは残念だ、あと一人なのにな。一緒に来ているメイドのじぇーんちゃんは、麻雀できないんでっか。
真鍋:じぇーんは、英語圏で育ったから、漢字ゲームの麻雀は無理だと思う、ポーカーとかブラックジャックならできると思うが。
岡谷:そりゃ仕方ないな。ちょっと、トイレに行ってくるよ。すぐに帰ってくる。
化け物のように強いレーサー岡谷と麻雀をしなくてすんで、ホッとするクリムゾン真鍋。
くる:社長、僕、麻雀できます。麻雀格闘倶楽部で練習しましたから結構強いですよ。
真鍋:ダァ~、シ~ッ、余計なことを言うんじゃない。君は岡谷さんの恐ろしさを知らないからそんな気楽なことが言えるんだ。岡谷さんに聞かれたらどうする。
岡谷:クルムシさん麻雀できるのか、それは好都合。ぜひお手合わせしてもらいたい。
真鍋:なんで、そんなに早くトイレから帰ってこられるんだ。おかしいじゃないか。
岡谷:ワシの陰でこそこそ密談をしている真鍋はんの気配を感じたから、トイレは先送りにしたよ。やはりワシの直感は当たっていたようだ。地獄耳はワシの特技の一つだ。
クル:社長、まあいいじゃないですか、久しぶりに社長と会って、明日香村で麻雀できるなんて、よい機会ですよ。
岡谷:クルムシさんは、良い面構えをしている。きっと立派な雀士になるだろう。ぜひともお手合わせ願いたい。
クル:褒められると気分いいですね。さっそく始めましょうか。
岡谷さんの恐ろしさを知らない脳天気な人はいいな、なんて今日は不幸な日なんだ、ぶつぶつ。
岡谷さんが勝ったら、私はマスターのところを退職して岡谷さんに雇ってもらおうかな。
偶然が重なり、橿原神宮で4人メンバーが揃ってしまい、クロニン軍団との抗争も三匹の熊の踊りのことも忘れて、午前中から麻雀をすることになったクリムゾン真鍋。勝敗の行方はいったい…。