第15回:海、遥かなる憧れ。
ハンター竜田との待ち合わせ場所である新石垣島空港に到着したクリムゾン真鍋。
真鍋:石垣島に到着だ、飛行機で3時間近くかかるとは、台湾並みに遠いわけだ。で、ハンターはまだ到着していないのかな、小腹が減ったからなんか食うか。
空港内のコンビニでソーキそばを見つけて喜ぶクリムゾン真鍋。
真鍋:いきなり沖縄名物ソーキそばを食えるとはなかなか幸先がいいな。
真鍋:おや、ハンター竜田からのメールが、「空港前の駐車場で待ってる、すぐ来い」だって、仕方がない、そーきそばは持っていくことにしよう。
竜田:先についたから車を借りといたやんけ、石垣島は車が必須だからな。
真鍋:なんですか、この車は…、軽トラじゃないですか。石垣のリゾートホテルに泊まってのんびり構想を練る予定なので、なぜ軽トラ…。
竜田:この時期、レンタカーは予約で一杯やんけ。本当はハリアーを借りたかったが、当日予約では無理やんけ。そもそも、今日の朝に予約を決めたんだから、軽トラでも借りれただけラッキーやんけ。それに軽トラのほうがサーフィンのボードを運ぶのに便利やんけ。
真鍋:そりゃそうだ、確かに急なブッキングだったから、しかたないな。まあいいことにするか。
竜田:それはそうと、そのソーキそばは車内に持ち込まれると車が汚れるやんけ。後ろで食ってくれ。荷物の見張りの為なら荷台に乗っても問題なし。
真鍋:そうか、それはいい考えだ。では、さっそく荷台に乗り込むとするか。
しぶしぶ、軽トラの荷台でソーキそばの続きを食べるクリムゾン真鍋。
真鍋:で、これからどこに行く、フサキリゾートホテルのプールでのんびりするか。
竜田:チェックインタイムまでまだ時間がある。その前に、電波望遠鏡によっていこう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
真鍋:これが世界の誇る石垣島の電波望遠鏡か、宇宙の裏まで見通せるレベルだな。
竜田:VERA望遠鏡という、宇宙の神秘に迫るプロジェクトの一貫らしい。
真鍋:そりゃいいな、行ってみたいと思っていたんだ。これを使えばデスビスノスの正体とか調べることができるかもしれんな。
竜田:デスビスノス…、なんだっけ、それは。
真鍋:そういう生き物がいるんだ、私の頭の中にだがね。気にする必要はない。
そういいながら、VERA望遠鏡の写真をとリ始めるクリムゾン真鍋。
竜田:しかし、軽トラの荷台から写真を取るのは便利やんけ、車から降りる必要がないし、足場の安定している。
真鍋:そりゃそうだが、暑いぞ軽トラの荷台は。そろそろ座席に戻っていいか、ソーキそばも食い終わったし。
竜田:それなら問題ないやんけ。では、チェックインタイムも近いしホテルに向かうやんけ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
竜田:到着したぞ、フサキリゾートホテル。なかなかいいホテルやんけ。
真鍋:確かに良いホテルだ、いかにも高そうなホテルだな。
竜田:オトクテクニックを駆使して、かなり安くブッキングできた。ルートインに泊まるのと同じくらいの料金で泊まれるやんけ。
真鍋:それは素晴らしい、さすがハンター竜田。無駄な出費は一切しない、卓越したライフスタイルだね。
竜田:大事なのは金額ではない、値引き率やんけ。今回は値引き率78%、なかなかよい話やんけ。
真鍋:それはそうと、昼めしはどうする。ソーキそばだけだとすぐに腹が減る。豚足でも食いに行くか。
竜田:オトクの道から考えると、ここはマクドナルドに行こう。ちょうど株主優待券が2枚ある。これをつかって肉厚サムライバーガー、オプションでトマト3枚のせ、ポテトLにオレンジジュースLサイズ氷なし。これが一番オトク率がいいやんけ。
真鍋:石垣島でマクドナルドとはね。石垣島に来ても自然体で過ごすとは、さすがハンター竜田。おトクハンターの後光が差してるな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
真鍋:昼飯も食ったし、プールサイドでのんびりするのはいいな。さて、デスクリムゾンの新作の構想でも考えるか。
竜田:適当に考えてといてくれ、ワシは昼寝するやんけ…。
真鍋:なんだ、一緒に考えてくれるのではないのか…。まあ、仕方がない一人で考えるか。
気持ちよさそうに寝息をたてて深い眠りにつくハンター竜田。
真鍋:そういえば、デスクリムゾン1のストーリーと世界観も同じような環境で構想を練ったな。あれは確か1994年の冬、イスラエルのエルサレムから車で1時間、死海の辺りのホテルで。死海にぷかぷか浮かびながら、雲ひとつない青空を見ながら、越前康介や、デスビスノス、マルマラ共和国の話なんか考えたものだ。懐かしい、全ては皆懐かしい…。
真鍋:しかし、全く何のアイディアも浮かばん。困ったものだ。
真鍋:どうやら、完全なスランプに陥ったようだ、こういうときには寝るにかぎる。ということで一休みしよう。
そろそろデスクリムゾンの新作のアイディアが思いつくはずだ…。おかしいな、急に眠くなってきた。なにも思いつかない。
.マスター、陰ながら応援してます、頑張ってください!
石垣島に来たものの、リゾートを満喫する以外の展開がなく、苦悩するクリムゾン真鍋…。次回の展開も不安で一杯。
第14回:世界観を探して南へ。
デスクリムゾンの新作を作る…、この事実が重く心にのしかかるクリムゾン真鍋。どのような作品にまとめるべきか日々葛藤するのである。
じぇ:おはようございますマスター。ご機嫌はいかがですか。
真鍋:ご機嫌は最悪だ、デスクリムゾンを作る話になってきてるから気分が悪い。本来はドリームジェネレーションの続編を作るはずだったのに、ぶつぶつ。
じぇ:どうして、デスクリムゾンの続編を作るのはそんなにストレスなんでしょうか、待ってるファンの人もそこそこいるんですよね。
真鍋:一部、心から待っててくれるファンが居るのは事実だ。だが、大半の人が期待していることは、偶然できたデスクリムゾンの続編を作って壮絶に爆死すること、中途半端なクソゲーになってね。コンテンツとしてはそのほうが面白いし。
じぇ:なんか、ひねくれた考え方ですね。世の中そんな人ばかりじゃないでしょう。
真鍋:やはり、幸せな人が失敗して落ち目になる話というのは、結構人気あるんだ。そのために人気を煽っている部分もある。
じぇ:そんなものなんですかね。
真鍋:私が仮にすごいメンバーを集めて、素晴らしくクオリティの高いデスクリムゾンを作ったとしよう、その評価は「こんなのデスクリムゾンじゃない、俺たちが待っているのは前回を超えるクソゲーだ」こんな感じ。クオリティを上げれば上げるほど、ファイナルファンタジーの新作に比べてとか、ピグミン4に比べて…みたいな不毛な評価を受けることになる。
じぇ:そのような作品と比較されても困りますよね。
真鍋:さりとて、狙ってクソゲー作ると、「なんかわざとらしい、白々しい、狙ってクソゲー作るなんて痛々しい、さっさと引退しろ」。まあ、こんな感じになると思う。もともと引退状態だったのが縁あって、現実社会に戻ってきて新作を作ろうと考えているのに、さっさと引退しろと言われるのもあまり愉快な話ではないよね。
じぇ:まあ、人気商売の宿命ですね。そこをなんとかするのが一流のプロデューサーってものなんじゃないですか。
真鍋:結局そうだ、じぇーんすらそういう考えになるよな。要するに「ごちゃごちゃ言わんと凄いの作って持って来い、中途半端なもの作るんじゃねーぞ」、こんな感じだよね。
じゃ:一言でいうとそうですね。
真鍋:わかった、ごちゃごちゃ言わんと凄いの作るように努力しよう。ということで、私はしばらく南の島で構想を練ることにする。段取りよろしく…。
じぇ:わかりました、こういう話なら、オトクハンターの竜田さんに依頼するのがいいと思います。最近お会いしたんですよね、竜田さんと…。
真鍋:それはいい考えだ、では、「南の島でじっくりと構想を練るから付き合ってください。ついては手配よろしく」こんなメール、ハンター竜田に送っておいて。では私は寝るから…。
じぇ:まだ朝の10時ですよ、もう寝るんですか…。
返事せずに、ソファで眠り始めるクリムゾン真鍋。早速いつもの現実逃避が始まったらしい。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
じぇ:おはようございます、マスター。今日2回目のおはようですね。さっそく竜田さんから返信メールが来ました。読み上げますね。
真鍋:ああ、よろしく頼む。
竜田:親愛なるクリムゾン真鍋、スイカは美味かったか。で、依頼の件だが、行き先は石垣島に決定した。出発は今日14時のフライトやんけ。石垣島空港で会おう、遅れないように飛行機に乗るやんけ。直前割引でなんと80%オフ、オトクハンターの血が騒ぐチケットだ。
真鍋:おお、さすがハンター竜田。オトクハンターの名前に恥じない凄い航空券探してきたな。じゃあ早速、出発するとするか。
じぇ:ホテルってどんなとこなんですか。それによって用意する荷物が変わるんですが。
真鍋:フサキビーチリゾートホテルって書いてるな。よくわからないところだが、ハンター竜田が選ぶんだから間違いないだろう。
じぇ:よい休暇を、マスター。
真鍋:違う、違う、休暇じゃない。デスクリムゾンの新作を作るための構想を考えるんだ。青い海、青い空、澄んだ空気、こんな中で構想を練ったらさぞかしいいものを思いつくだろう。
じぇ:デスクリムゾンってそんなもんでしたっけ、深水埗のゴミゴミしたカフェで考えたほうがいいと思うのですが…。
それじゃ、いつもと同じになる。ごちゃごちゃしたカオスのデスクリムゾンができるだけだ、そんなのをファンも望んでないだろう。
わかりました、何もいうことはありません。お気をつけて…。
急遽、石垣島で構想を練ることになったクリムゾン真鍋。数十年ぶりのハンター竜田との旅行はいったいどうなるのか、次回をお楽しみに。
第13回:チョモの宿命とは。
ココモリ村からデスクリムゾンの完成版を作る覚悟を決め、自宅に帰ってきたクリムゾン真鍋。
じぇ:グッドモーニング、サー。
真鍋:おお、これはひさしぶりだね、じぇーん君。2週間も経ったのか、帰国したのはミンダナオ島だっけ、感想はどうだね。
じぇ:2週間のんびりできました。甥や姪にも久しぶりに会って、お小遣い渡したら喜んでました。
真鍋:それは良かった、リフレッシュできて…。
ちょ:おはよう、お父さん、じゃなかったクリムゾン真鍋。
真鍋:おお、これは桐太郎くん、じゃなかった、チョモランマくん、夏休みは充実していたか。
ちょ:鉄緑会の講習会に行って、柔道の合宿に参加してたらあっという間の2週間でした。鉄緑会は雰囲気がサピックスによく似てますね、同じ人が仕組みを作ったのかなって感じで。
真鍋:見た目は違うんだが、その合理性とか理念はかなり近いものがあるな。
ちょ:お陰で勉強が思い切りはかどって…、小学校6年生の勉強三昧の日々を思い出しました。
真鍋:それは良かった、その調子で大学受験も軽くこなしてくれ。でお前の宿命の話だが…。
ちょ:デスクリムゾンの話ですよね、クリムゾン真鍋がいない間にデスクリムゾンについて、いろいろ調べたので、ある程度理解しました。俺は大変なカルマを背負って生まれてきたってことは解りました。
真鍋:それなら話が早い、要するにコンバット越前は真鍋家の守り神で疫病神、デスクリムゾンは避けられない宿命、どうやら、宿命と真剣に向き合う時が来たって感じだな。
ちょ:いよいよ、銭湯開始ですね。
真鍋:デスクリ用語をよく知っているな。
ちょ:それは常識のレベルです。
真鍋:それはそうとパトラちゃんがデスクリムゾン1のプレイ動画をアップしているみたいだな、ありがたいことだ。何十年も前の作品を取り上げてくれるのは。
ちょ:デスクリムゾンの動画とか、配信するのはいいの。事前にクリムゾン真鍋に許可取らないといけないんじゃないの。
真鍋:そのあたりは、自由にやってもらって結構なんだ。デスクリムゾンはすでに私の手を離れ、ファンみんなが育ててくれた作品。私が使用方法を許可するとか許可しないとかの問題じゃない。使いたければ自由にどうぞ。使うときは他のファンの気持を考えて使ってくれると嬉しいね。基本、私からいろいろと口を挟むことはしないんだが、あまりファンの調和を乱すことがあれば、やんわりと改善を要望するって感じだな。
ちょ:ポプテピピックの動画もそんな感じで作られたの。
真鍋:あの動画については取材して制作みたいな大掛かりな話だったので、事前に制作の人から連絡をくれて正規ルートで話をして、自由にやってくださいと伝えておいたわけだ。まあ、みんなで楽しくやろうじゃないか。
ちょ:それがいいですね。
真鍋:そういえば、それに関連して一つだけ制限をつけようと思う。それは、「デスクリムゾンの新キャラについては私が許諾して作る」。ここのニンクリ物語も、今後作る作品にも言えるんだが、世界観を統一するために新しいキャラを追加するのは私だけがやろうと思う。既存のキャラをどのように使うのかは自由だけどね。
ちょ:じゃあ、コンバット越前とダニーとのボーイズラブ話を作るのはオッケーなの。
真鍋:それは問題ない、既存キャラだからな。同じ理由でムサピィと六条虎之助の恋愛話も問題ない。エコールの著作物については同じ基準だ。このあたりになると、なかなかわかりにくい話だとは思うが。
ちょ:まあ、いいことにします。しかし、許諾関係をニンクリ物語の雑談レベルで話するのもいかがなものかって内容ですね。
真鍋:そりゃそうだ、このあたりの基準はいずれ、文章にまとめて公開することにしよう。デスクリムゾン関連のプレイ動画配信とか、二次創作とか、自由にやってもらって問題ない、ですクリムゾンはみんなのもの、私は暖かく見守ってます、って感じだね。
どうやら、デスクリムゾンについては、映像やキャラを自由に使っていいらしい。
真鍋:で、UNITYについてはなにか進展はあったのか。
ちょ:だいぶ、画面の構成が見えてきました。今はシカに公式キャラのユニティちゃんをのせて動かすテストをしていますが、ある程度当たり判定とか照準とかの仕組みができてきたところ。
真鍋:今の時点では、チョモの作っているこのゲーム画面をデスクリムゾンの新作として採用するかどうかはまだ決まっていないが、ひたすらクオリティアップに努めてくれ。
ちょ:了解~、でいつデスクリムゾンの続き作るって判断をするの。俺はもうやる気なんだけど、もう一つクリムゾン真鍋の反応がスッキリしないね。
真鍋:デスクリムゾンを作るためには、ぜひ参加して欲しい人たちというのがいるんだ。その人たちの協力が必須だからね。まずはその人達に連絡を取らねばならないよな。判断はそれからって感じだね。
ちょ:たとえばどんな人。
真鍋:まずは、コンバット越前の声をやっていた声優のせいじろうさん、以前は関西にいて電話番号も知っていたのですぐに連絡が取れたんだが、いまはどうしているのかよくわからん。元気でいてくれればいいんだが。
ちょ:それは心配ですね。コンバット越前のあの声がなければ、デスクリムゾンは成立しませんよね。他にはどんな人。
真鍋:デスクリムゾン1でキャラクターを作ってくれた吉松さんにも、30年ぶりにぜひ話がしたい。吉松さんの作ったキャラクターはなかなか秀逸なものが多い。
ちょ:スナブリンとか、いろいろ作った人ですね。
真鍋:次に音楽、尾形さんは最近見かけないが何しているんだろう、瑞木さんもね、渡辺さんは元気なのかな。音楽はいろいろ試したいことがあるので、新しい人を使いたいところもあるんだが…、でもデスクリムゾンに思い入れをもち、この世界観を理解している人に参加してほしいと思っている。音楽は大事なパートだからね。
ちょ:色んな人の支えがあって、デスクリムゾンは完成したんですね。
真鍋:メインビジュアル作った山崎さんにもぜひ、新しいビジュアルを書いて欲しい物だ、みんな元気ていてくれればいいんだけど。
ちょ:その人たちにどうやって連絡取るの。
真鍋:連絡先がわからない人は、ぜひ、webmaster@e56.info、あるいはクリムゾン真鍋のX(ツイッター)にDMで連絡して欲しい。30年も経つとこちらではなかなか連絡先がわからない人が多いからね。積もる話もあるから、作品に参加するしないは別として、今までデスクリムゾンに関わった人たちの連絡は歓迎だ、ニンクリ物語見てます、の一言でも励みになるから。
ちょ:ゲーム制作というのはなかなか微妙なものなんですね。
人にはいろんな考え方や大事にしている部分、譲れない部分があるからな、それをまとめ上げるのがゲームプロデューサーの腕ってものだ。
俺が背負ったカルマ払拭のためにも、デスクリムゾン完成版、ぜひやろう!
躊躇いながらも、デスクリムゾンの完成版に向けてゆっくりと歩を進めるクリムゾン真鍋とチョモランマ桐、今後の展開に要注意。
第12回:この場所はいつか来た場所。
スイカ市場に滞在中の真鍋の前に突然現れたスナブリン。10数年ぶりに現れるスナブリンにたじろぐクリムゾン真鍋。
スナ:プレジデント真鍋、名前を変えたそうですね、今の名前はクリムゾン真鍋らしいので、これからはそう呼ばせてもらいます。私はあなたがここに来るのをずっと待っていました。
真鍋:おかしいな、10数年前に弁天町のオーク200で会ったスナブリンと君は違うのか。あの時、あの場にいたなら私をずっと待っていたと言うのは辻褄が合わないんだが。
スナ:その通り、私がスナブリンになったのは割と最近のことですから。我々スナブリンはあなたも知っている通り、あちこちにたくさん存在しています、そして今でも増え続けています。新しい技術が開発されるたびにビジネスモデルが変わっていきます。そうすると新しくスナブリンが生成される。その仕組はあなたもよく知っていますよね、クリムゾン真鍋。
真鍋:まあ、そうといえばそうだ。私は1995年の時点では最もスナブリンに近い存在だったからな。
スナ:それなのにあなたはスナブリンになりませんでした。そうこうしているうちに2010年代のスマートフォン時代がやってきて、劇的なゲームチェンジが起こりました。その結果、コンソールを主戦場としていた私があなたより先にスナブリンになってしまうとは、皮肉なものです。
真鍋:世の中、そんなものさ。
スナ:あなたはこの場所のことを全く覚えていないのですか。時代はバブル景気の頃です。
真鍋:1994年にデスクリムゾンを作って以来、それより前のことは殆ど覚えていない。バブル景気と言えば1980年代だな。なにか、心にシャッターが作られて隠されている感じなんだが。
スナ:では教えましょう。あなたは大学生の頃、ここに2週間ほど住み着いてスイカ運びのアルバイトをしていたはずです。だから、スイカは受けるより投げるほうが楽ってことも知っていましたね。
真鍋:そうだな、確かに私が大学生の頃、ここでスイカを運んでいた記憶がある、すっかり忘れてたが今思い出した。
スナ:せっかくだから、あなたのその時代に私が案内します。あなたは麻雀とドライブに明け暮れ、まだコンピューターに触ったこともなかった頃です。
真鍋:それは興味深い話だ、ぜひ。
突然、スナブリンと共に白い光に包まれて、時空の谷間を旅する真鍋。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ちょうどスイカを運び出すトラックが到着したらしい、しばらく経つと二人の男がリズムよくスイカを投げ始める。その姿を市場の天井に取り付けた扇風機から広場を俯瞰してみるスナブリンとクリムゾン真鍋。
真鍋:あれが大学生の頃の私だな、スイカをキャッチしているのがそれらしい。赤のトレーナーを着ているから間違いない。当時から赤は私のイメージカラーだ。どうやら当時はガラスの腰ではなかったらしい。落とさず順調にスイカをチャッチしている。
そういったとたん、真鍋がキャッチに失敗してスイカを落とす。あたり一面に赤い破片がぶちまけられる。
スナ:スイカを投げているのは誰だか解りますか。
真鍋:なんか記憶がはっきりしない、もう少しで思い出しそうなんだが。
スナ:投げているのは私です。だけど、今は気にしなくていいです、そのうちに詳しく思い出すでしょう。
真鍋:しかし、キャッチャー下手くそだな、さっきからいくつもスイカを落としている。投げるのが下手なのか、受けるのが下手なのか、我々がここから眺めているのが暗黙のプレッシャーになっているのかもしれないな。
スナ:せっかくだから、スイカの軌跡に干渉して手伝ってみるのはどうですか、過去の世界に直接干渉することはできませんが、このコントローラーを使えば影響を与えることはできます。
そういいながら、ファミコンのコントローラーを渡すスナブリン。
真鍋:そうだったのか、それまで順調にキャッチできていたスイカを急に落とすようになったり、その逆が起きるのは、外部から干渉されていたんだ、全く気がつかなかった。
スナ:世の中とはそういうものです、本人が知らないだけで、周りや過去や未来からの干渉を受けながら時間というのは進んでいくものです。
真鍋:あれ、スイカが予想外の動きをする、思い通りにコントロールできなくなった、なぜだろう。
スナ:ふぁふぁふぁ、それは私も操作してるからです、この2Pコントローラーでね。
真鍋:スナブリン君、予告なく干渉するのは止めてくれないか。周りに迷惑だ…。
突然、スイカがすさまじい勢いで加速し、キャッチャーをしていた大学生時代の真鍋の顔面を襲う。受け損なった真鍋は顔面から血を流して倒れ込む。
真鍋:なんて酷いことをするんだ。なるほど、瞼の上にできた傷はこの時にできた傷、いまもここに残っている。自分の失敗かと思っていたが、君のせいだったのか。
スナ:これはゲームなんです、スイカを投げるゲーム。ゲームの世界では下手なやつが悪い。安心してください、もうすぐゲームオーバーです。文句があるなら初めからもう一度スタートすればいいだけのこと。
真鍋:そんなことができるのか。
スナ:飛ばせないいロゴを見ればいいんです、その間に、裏のジョブで新しくステージを構成する準備をしているわけですね。
真鍋:そういやそうだったな、ロゴが飛ばせないのはそういう裏の事情があったな。しかし、スイカを投げていたのは君なんだろうが名前が思い出せない。
スナ:では、そろそろ教えてあげましょう。今は無きダイナウエア、私はそこであなたと一緒にプログラマーとして働いていました、そして夏休みにあなたの誘いで一緒にスイカを運ぶアルバイトに来ました。
記憶がかすかに蘇るクリムゾン真鍋。しかし、視界がぼんやりして集中できない。
スナ:そこでゲーム作りについて私は熱く語ったものです。当時のあなたはゲームをプレイするのは好きだったが、作るのには全く興味がなかったですからね。
真鍋:そうだった、当時は未来のエネルギーについて考えていた。無限のエネルギーを人類は手に入れられないのか。もし手に入れることができれば、戦争など起こさず、すべての人が幸せになれるのではないかと密かに思っていた。だから、ゲームを作るということは遠い夢の世界だった。
スナ:私は大学を卒業するとダイナウエアを去り、ゲームを作るためにナムコに入社しました。そこで十数年間懸命に働き、それなりにいいゲームを作ったと自分でも自負しています。そしてある日、思うところがあって私は仲間と共に独立して自分の会社を作りました。その会社はある程度成功したが、時代が変わって私の作るものは世間に通用しなくなりました、世の中スマホゲームが席巻し、本格的な据え置きゲームは脇に追いやられました。しばらくして、私の会社は行き詰まりました。そして私は最後の賭けに出た。すべての資金と情熱と時間を投じて最高のものを作りました、だが作品は全く売れず、私は敗北しました。そしてその失敗を私は自分の生命で償った。そして思いを残したままのスナブリンとなった私はここでまたクリムゾン真鍋と会えることを楽しみにしながらあなたが来るのを待っていました。
真鍋:そんな経緯があったのか、私自身は全く知らなかった。
スナ:私はあなたが羨ましい、クソゲー作って、のうのうと生き延びて、その後はその悪名を活かして有名タイトルの裏方に回り、そこでビジネスを成功に導きました。奇跡が何回も起きているはずですが、なぜあなたはそんなに悪運が強いんですか。
真鍋:自然体で生きているだけだ、多くを望ます、執着せず、質素に質実剛健に生きている、それが私のモットーだ。
スナ:ならば、あなたはもうゲームを作る必要はないでしょう。あなたも知っている通り、ゲームを作るということは敗北したとき私のようなスナブリンになるということ。わざわざスナブリンになる必要性をあなたには全く持ち合わせていないはずです、やり残したことは何もない。
真鍋:心残りはある、完全なデスクリムゾンを作りたい。それに当時の仲間でもまた一緒に作品を作りたい人は何人かいる、また彼らに会いたいものだ。
スナ:あなたは既に成功者です、あえて危険な冒険をする必要はありません、「人間なんてなるようにしかならん」。
突然真鍋の頭を覆っていた白い霧がスッと消え去る。
真鍋:君はタニムラくんだな、「人間なんてなるようにしかならん」、その言葉を聞いて思い出した。そして私ががなぜゲームを作る気になったのか思い出した。君がかつてここで私に熱く語っっていたこと、それが私をゲーム制作に興味をもたせ、ゲーム制作を始める元になったんだね。
スナ:どうやら、すべてを思い出したようですね、クリムゾン真鍋。では、またいつか会いましょう。
突然、スナブリンの姿が消えた。あたりに静寂が戻ってくる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
花咲:おはよう、クリムゾン真鍋。よく寝られたか、スイカのお化けは出てきたのか。
真鍋:まあ、そのようなものが出てきたわけです。
花咲:大体の経緯は承知している。やはり運命からは逃れられないようだ、どうだ、デスクリムゾンの続編を作る気にはなったか。
真鍋:どうやら、それがやり残した最後の使命みたいですね、そろそろ覚悟を決める時が来たかもしれません。
花咲:それは良いことだ。
真鍋:チョモがどう考えるか、それに、以前一緒にデスクリムゾンを作った仲間たちの協力も必要です。困難な道だとは思いますが…。
それでもクリムゾン真鍋がデスクリムゾンを完成させるのは避けられない宿命みたいだな。
そうかも知れません、チョモにも自分の宿命を受け入れる覚悟があるか…。
悩みながらもデスクリムゾンの完成版を制作する覚悟を決めたクリムゾン真鍋。制作はスタートできるのか、次回に注目。
第12回:この場所はいつか来た場所。 Read More »
第11回:スイカお化けが出た。
真鍋:暑いな、暑すぎる、この市場はエアコンは動いてないのかな。電気代ケチっているのか、故障なのか、夏の夜に止まるとは、使えないエアコンだ。
そう呟きながら、体を回転させる真鍋。ドスンと音がして地面に落下する。
真鍋:急に高いところから落ちたようだ、肩が痛い。はて、私はなんでこんな所にいるんだろ。
そういいながら、スマホの画像をみるクリムゾン真鍋。昨日撮影したココモリ村の写真を見ると記憶が蘇ってくる。
花咲:俺から説明しよう。ニンジャの世界では、エアコンを使わないのが標準だ。厳しい修業によって火の中をくぐり抜けたり、極寒の水に潜ったりして苦しみを喜びに変える、それがニンジャだ。決して電気代をケチってるわけではない。
真鍋:あれ、そんなところにいたんですか、ニンジャ花咲。私は特にニンジャの修行に来たのではなく、スイカ市場で人が足りないと言ってたから手伝っているだけなんだけど。
花咲:新しい世界に入ったら、そこの風習に従うのが人の務め。まあ、諦めてこの環境に慣れてくれ。では良い睡眠を。
頭をゆっくり振りながら、近くにおいてあるスイカのかけらを口にする真鍋。
真鍋:やっと昨日の経緯を思い出した、ニンジャ花咲の招きでココモリ村にきて、そこでニンジャ花咲のスイカ卸の手伝いを頼まれて市場の事務所に泊まったんだな、やれやれ、暑いのは予定外だ。
真鍋:ニンジャ花咲もせっかく現れたんだから、ごちゃごちゃニンジャの道を説いてる暇があればエアコンのスイッチを押してくれればいいのにな。
プォプォ、トラックのクラクションの音がする。
真鍋:これは、スイカの納入トラックがついた合図だな、昨日説明を受けた気がする。トラックが到着するとスイカを車から降ろす作業があるんだったな。やれやれ、仕事でもするか。
謎の運転手:お疲れさん、スイカ持ってきたぞぉ、今日は少なめで800個やんけ。ラッキーやな、早速スイカ降ろし始めようやんけ。
真鍋:あれ、なんか君は見たことあるな、この特徴ある喋り方も聞き覚えが…。と思えば、君はなんと竜田さんではありませんか、これは久しぶり、ここで会うなんてなんて奇遇。
竜田:あれ、なんとまあ、そこにいるのは真鍋さんやんけ。ここ数年音沙汰ないと思ったら、市場で働いてるとは思わなかったやんけ。さては新作ゲームが大コケして売れなかったから、夜逃げして市場に身を隠しているって話でっか。
竜田と真鍋は同じ大学で学んだ学友だ。当時からオトクの道を極めようとしていた竜田の緻密な行動様式は、適当な行動で自滅することが多かった真鍋にとって新鮮な驚きであり、その後のゲーム制作においても大きな影響を与えたのである。
真鍋:まあ、おおむねそれに近い話ではあるが…。それより、竜田さんはなんでここに。というか、君の大学時代の別名はオトクハンターTだったな。オトクのことならワイに聞け、が口癖だった竜田さん、これからはハンター竜田と呼ぶか。でハンター竜田はなんでスイカ運びのトラックを運転しているんだ。
竜田:オトクのことならワイに聞け。夏はオトクな話が少ない、夏枯れといって、株も為替も証券も動きが止まる。それなら、この季節はスイカを扱うのが一番やんけ。じゃあ、スイカパーティでも始めるか。
そういいながら、持ってたスイカをワザと地面に落とすハンター竜田。
竜田:おおっと、手が滑った、ひびが入ったから、これはもう売り物にならないやんけ。捨てるのももったいない、仕方ないから食うとするか。
そう言いながらスイカの真ん中の甘いところだけをレンゲですくって贅沢に食べる竜田。
真鍋:そのレンゲはどうしたんだ、たまたま持ってたのか。
竜田:そうそう、たまたま持ってたやんけ。世の中、こういいこともあろうとあらかじめ用意しておくのが、真のオトクハンターの心構えでんな。それを確実に実行する、それがオトクハンターの生き様だ。
真鍋:ニンジャの生き様じゃないのか。ややこしくなったが、ハンター竜田はニンジャではないみたいだ、で、花咲はニンジャっぽくないが、ニンジャ。だいぶ頭が混乱してきた。
竜田:スイカパーティも終わったし、早速、仕事…。俺がトラックの荷台からスイカを下に投げるから、クリムゾン真鍋はそれをキャッチしてくれ。少々落としてもいいが、落としたスイカは食わないといけないから、あまりたくさん落とさない方がいいやんけ。
真鍋:私はガラスの腰だし、球技は苦手だ。できれば控えめにスイカを投げるピッチャーの役をやりたいんだが。
竜田:まあ、投げるほうが腰の負担は少ないな、じゃあ交代しよう。
真鍋:トラックの荷台から地面まで約3メートルの高さ。6メートルはスイカを投げる計算だ。初球はストライクを決めたいものだな。
そう言いながら、2時間かけて800個のスイカを市場に並べていくクリムゾン真鍋とハンター竜田。時々トラックを移動させながら、10個近いスイカの山ができていく。
竜田:これで最後でんな、お疲れさん。
真鍋:いや、終わった終わった。結局一つも落とさなかったから、無理にスイカ食う必要がなくなった。さすがオトクの神様、ハンター竜田。無駄な行動は一つもないな。
竜田:じゃあ、わしは帰るやんけ。新しいオトクの情報掴んだら、すぐ連絡してくれ。
そう言い残して竜田は轟音をたててトラックで去っていく。事務所に戻ってテレビをつける真鍋。疲労のあまり、そのまま椅子に座って居眠りを始める。テレビが放送終了となり、あたりは真っ暗になる。そんなときに暗闇の中から声がする。
真鍋:なんだか、先程落としたスイカのあたりから声が聞こえるようだ。スイカのお化けでも出たのかな。
謎の声:ひさしぶりですね、プレジデント真鍋。覚えてますか、私のことを。
真鍋:もちろん覚えている。覚えているが、覚えたくない。でも覚えている。きみはスナブリン、10数年前、君とは色々あったが、そのときに決着が着いたはずなんだが…。私の前には現れるなってね。それなのになんでまた私の前に現れるんだ。
「出典:近代芸無辞典より」
時は来た、それだけだ。ゲームを作り始めた君を迎えに来た。
そのセリフ、最近よく聞くな。君とは永遠に会いたくない。少なくとも、今はまだ会う必要はないだろう。
10数年ぶりにスナブリンと再会してたじろぐクリムゾン真鍋。スナブリンが現れた目的は、クリムゾン真鍋のゲーム制作はいったいどうなるのか。次回をお楽しみに。
第10回:新しい司令官着任。
ピロロン、メールの着信音がする。
真鍋:誰だろう、なんか嫌な予感がするメールの着信音だな。誰からか見てくれないか、じぇーん。
じぇ:イエッサー、あれ、よくわかりませんが、WNUからって書いてますね。
真鍋:WNU…ああ、世界ニンジャ連合ね、またややこしいメールのような気がする、読み上げてくれますか。
じぇ:はじめてメール差し上げます。私が世界ニンジャ連合極東支部に新しく着任した、司令官のハナサカです。前任者から話は聞いてますので、一度世界ニンジャ連合極東支部にお越しいただけませんでしょうか、よろしくお願いします。
真鍋:言い方はすごく丁寧だが、要するに挨拶に来いってことだな。なかなか強引なオファだが、極東司令官ならそれくらいの強引さは必要か。我々の開発室は冷蔵庫にハイボールが大量に入っていたりかなり庶民的な雰囲気だから、ここに来られてうだうだ言われるのも不愉快だしこちらから行くほうが気が楽だ。
じぇ:そうですよね、そもそも、このハナサカ司令官が酔っぱらいかどうかが問題ですよね。まず、こちらから出向いて相手の様子を見るのは営業の基本ですしね、マスター。
真鍋:そうと決まったら、さっそく極東支部に行くことにしよう。で、チョモはどうする、一緒に行くか。
チョ:俺は今日は鉄緑会の講習があるから行きません。訳の分からない支部にいってる時間はないんです。
真鍋:そうか、鉄緑会は東大予備校として大事だからな。しっかり勉強して、その成果をゲーム業界に還元するようにな。
ちょ:ウィーッす。
真鍋:じゃあ、さっそく出発しよう、じぇーん、行き方は思いついたか。
じぇ:羽田空港から、セントレアまで飛行機、その後近鉄特急の特別電車、ひのとりを乗り継いで2時間位ですね。
真鍋:おお、あの高級シートで有名な近鉄特急ひのとりに乗れるとはラッキー、さっそく出発だ。ぜひともひつまむしを食べよう。
じぇーんと、ひつマムシを食いながらひのとりではしゃぐクリムゾン真鍋。ついに指定された場所に到着する、クリムゾン真鍋とじぇーん。
じぇ:マスターおかしいですね、指定された極東支部の住所は、ここのはずなんですが、それらしい建物が見当たりません。
真鍋:花咲青果市場って書いているな、これはどう見ても違うだろ、もう一度メールを確認してみろ。
じぇ:どうみても、ここです。それより、メールにはハナサカ司令官と書いてましたよね、ここが花咲青果市場だから、司令官の親戚の家かなんかじゃないんでしょうか。
真鍋:まあ、せっかくだから入ってみよう。こんにちわ、ハナサカ司令官はいますか。
謎の人:私がハナサカ司令官だ、これからは、ニンジャ花咲と呼んでくれ。世界ニンジャ連盟から、極東支部長として赴任してきた。よく来てくれたクリムゾン真鍋。これからは極東支部長として、ニンジャ世界発展のために、全身全霊戦うつもりなのでよろしくな。
真鍋:そうなんですね、ニンジャ花咲。しかし、メールとだいぶ言葉遣いが変わりましたね、多重人格か何かですか。
花咲:これはこういうものだ、俺様はメンタルがプリンなんでな。メールでは、弱気な人格がでて馬鹿丁寧になるが、対面すると本来の性格が出てくる。お陰でプリンのメンタルが壊れずに済んでいる。
真鍋:そう言うことなんですね。で、ニンジャ花咲はゲーム制作の経験はありますか。
花咲:そんなものは全くない、だがこれまでこの地よりたくさんのニンジャを養成して送り出してきたから、俺にとってはゲーム制作なんてチョロいものだ。困ったことがあれば教えてやるから、遠慮なく聞きに来い。
真鍋:それは頼もしいですね、近鉄特急にのってきます。ここって、忍者の本家である、伊賀と甲賀の中間にあるんですね。
花咲:そうだ、ここはココモリ村と言って、特別な位置にある。伊賀と甲賀の間に位置して、どちらにも影響を受けずに中立の立場で行動する、それがココモリ忍者の掟だ。
真鍋:そうなんですね、単にマイナーな系列なんじゃなく、独立性を保って権力を維持する永世中立な村なわけですね。
花咲:そうだ、他に質問はあるか。
じぇ:ニンジャ花咲マスターはどんな仕事をされているんですか。
花咲:きみがじぇーんか、よくみればなかなか美しいオナゴはんだな。
じぇ:ありがとうございます
花咲:本来は身を隠す仮の仕事のことは教えないのだが、きれいなオナゴはんに免じて教えるとしよう。私の仕事はこのココモリ村で、青果市場をやっている。メインに扱っているのは果物、特に夏のスイカは利益率が高く、売上の大半は7月と8月に集中している。ココモリ村は伊賀からも甲賀からも程良い距離で離れている小さな村だが、この一帯のスイカは、ほぼ私が流通させている。年に二ヶ月くらい働けば十分だから、その時期以外は世界ニンジャ連盟の活動を無理なくできる、スイカも食い放題だしな。
真鍋:しかし、じぇーん。またなんか怪しいやつがでてきたな。どうして俺の周りには変人ばかり集まってくるんだろう。
じぇ:もともとマスターの周りには怪しい人がたくさんいますから、こんなものではないでしょうか。そもそも、マスター自体が怪しい存在なのが理由なのでは。
真鍋:まあ、それには一理ある。昔から俺は変人コレクターって言われていて、周りに集まってくる友人たちもほとんど全員が変人だったよ。じぇーんも、その意味では十分変人なんだが…
じぇ:あまり嬉しくなですね、変人というのは。
花咲:さて、クリムゾン真鍋。今は7月でスイカの出荷が最盛期、人手が足りないから、ぜひ市場の仕事を手伝ってくれ、ゲーム制作の話は、夏が終わってからでいいだろう。
じぇ:賛成です、マスター。私もちょうど夏休みで国に帰ろうと思っていたところです。マスターがしばらく自宅にいないのは好都合ですね。
真鍋:まあ、しかたないな、せっかくだからスイカの流通の仕組みでも学習するとするか。いいですよ、ハナサカ司令官。半月くらいここに滞在して、スイカ市場を手伝うことにします。
それは良い心がけだ、人手不足が解消してよかった、よろしく頼む。
スイカも喜んでいますね、よかったよかった。
新たに現れた世界ニンジャ連合の新たな司令官、ニンジャ花咲。突然スイカ市場を手伝うことになったクリムゾン真鍋。ガラスの腰は大丈夫なのか…次回をお楽しみに。