第20回:明日香の歴史は世界の終わり。

レーサー岡谷の超人的な運転で、夕方に明日香村に到着したクリムゾン真鍋とじぇーん。

岡谷:着いたよ、真鍋はん。暗くなる前に到着してよかったな。

真鍋:さすがレーサー岡谷、相変わらず時間の使い方は厳しいな。

じぇ:もっと乗っていたかったです、岡谷さん。

岡谷:いつものことだ、褒めてもらうほどではないよ。

真鍋:ではさっそく石舞台を見学に行くことにしよう、3匹のクマが石舞台の上で踊っているはずだし。

じぇ:あれ、マスター、入場は4時45分までですよ、今が4時47分。ということはもう入れないのでは…。

真鍋:それは残念だが、仕方ないな。ハンター竜田がいたら交渉して入れるようにしてくれたかもしれないが、メンタルプリンの私では打つ手がない。

じぇ:マスターは、図々しいところと小心なところの両方がありますもんね。ここは、ノミの心臓がでたということで諦めましょう。

真鍋:まあ、そういうことだ、で、じぇーんにはなにか良いアイディアがないのか。あらかじめ用意してあったドローンを石舞台に飛ばすとか。

じぇ:今回、ドローンは持って来てません。この近くにあるキトラ古墳なら完全に屋外だし夜でも入れるはずです、そこに行きましょうか。

真鍋:それは良い考えだ、しかし、前から疑問だっだんだが、なんでキトラなんだ、そもそも古墳がカタカナというのも理解できん。

岡谷:ワシから説明しよう、ワシは歴史には詳しいからな。で、キトラというのは亀と虎、ここから来ている。亀虎がキトラ、そんな感じだ。

じぇ:亀と虎でキトラなんですね、勉強になります。

岡谷:古代中国から伝播した四神は、亀・虎・龍・蛇を指すんだが、亀と蛇がからんで玄武、それに白虎、青龍で構成されている。キトラ古墳の近くにある高松塚古墳には壁面に四神の絵があって有名だ。

真鍋:そうか、それでキトラなんだな。よくわかった。では、早速キトラ古墳を見に行こう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

レーサー岡谷の運転で、5分もかからずにキトラ古墳に到着する三人。

岡谷:到着したぞ、ワシはここで車のメンテナンスしておくよ。アドバンタイプDはトレッドに石を咬みやすいから取っておかないといかんよ。

真鍋:マイナスドライバーを用意してるとは準備がいいな、さすがレーサー岡谷。

じぇ:では、行きましょう、ここも急に閉まるかもしれませんし。300メートルほど先の斜面を登ったところにキトラ古墳があるはずです。

斜面を登り、キトラ古墳の前に到着するじぇーんとクリムゾン真鍋。

じぇ:到着しました、早かったですね。では私は、先にRX-7のところに戻っています。マスターはゆっくりとキトラ古墳を見学してください。

真鍋:なんだ、さっさと帰るのか。要するにじぇーんは車が大好きで、特に人気の旧車、RX-7が気に入ったわけだな。また一人になったみたいだ。

ぶつぶついいながらキトラ古墳の前に座り込み、下から古墳を眺めるクリムゾン真鍋。

古墳を前に急に睡魔に襲われ、うたた寝を始めるクリムゾン真鍋、しばらく時間が経過してふと、目が覚める。

真鍋:これはいかん、朝からの移動と、レーサー岡谷のハードな運転で疲れが溜まって眠っていたらしい。じぇーんとレーサー岡谷は大丈夫かな。

立ち上がろうとするが、金縛りにあったように動けないクリムゾン真鍋。すでに暗くなったキトラ古墳の、闇の中から謎の声が聞こえる。

謎の声:クリムゾンマナベ、オマエハナゼココニキタ、オマエニハカンケイナイバショ。

真鍋:その声は…、なにか聞き覚えがある、なんだろう。

謎の声:キュオーン、グォ。

真鍋:思い出した、これはデスビスノスの声、なんで現れたんだろう。

デス:オマエハヨケイナトコロニアラワレスギル、サッサトシネ。

デスビスノスとは、サターン版デスクリムゾンに登場するラスボスの名前である。真鍋が書いた小説「フリーズ」で倒されたはずだがまだ生きているという説もある。「出典:近代芸無辞典より」

デスビスノスが腕を上げると、黒い光がクリムゾン真鍋の周囲を包む。

真鍋:ぐぉー、なんだ、この黒い光は。そして、先に見えるのは…、なんと石舞台の上で三匹のクマが踊っている、あれが八熊伝に書いているという世界を終わりに導く熊なのか。

「しっかりしろ、クリムゾン真鍋」。突然足元から声が聞こえる。

真鍋:この声は確か…。

花咲:お前は幻想に支配されている、キトラ古墳の地下にはかつて、デスビスノスの一派が根城としていた軍事施設が置かれている。その名残でお前は幻想を見ているだけだ。気をたしかに持て。

真鍋:これは、花咲、助けに来てくれたのか…。どうしてここが判った。

花咲:ふっ、ニンジャのネットワークを舐めるんじゃない。怪しい動きはすぐに私のところに報告がくる。そして、速やかにそれに対応するだけだ。

真鍋:では、花咲はここにいるわけではないのだな、どこにいるんだ。

花咲:私はココモリ村にいる、そこから君の意識に直接話しかけている。といっても君のスマホに電話しているだけだがな。

真鍋:なんだ、超能力の一種かと思ったが、スマホで話ししてるんだな。そういえば、足元に落ちているのは私のスマホ、OPPO7Aだ。

花咲:21世紀とはそういうものだ。それより、石舞台で踊っている熊は写真に撮れないか、デスビスノスの意識に影響されているクリムゾン真鍋なら、撮影可能かもしれない。

真鍋:やってみよう、かしゃ、ぴしゃ、ぽんぽこりん。どうやら撮れたみたいだ。さすがOPPO7A、夢を撮影できるとは、不思議な機能が搭載されているな。

花咲:それは良いことだ、戻ってきたらその写真を分析することにしよう。

一つ教えてくれ、私がみた石舞台で踊る三匹の熊は、過去なのか、未来なのか、それとも…現代なのか。

それは、過去であり、未来でもある、現代ではない、それが答えだ。

デスビスノスの幻覚でさらに混乱するクリムゾン真鍋の意識。当初の計画であるゲーム制作が、とんでもない方向へと進展している現状にクリムゾン真鍋のノミの心臓と、プリンのメンタルは果たして耐えられるのか、続きは次回で。