橿原神宮前のホテルに泊まって、石舞台で踊る三匹の熊について考えるクリムゾン真鍋。眠れないまま、朝を迎える。
真鍋:どうも最近、身辺でややこしいことが多い。なぜだろう。ファイティングクライマックスのプロジェクトが終わって以降、静かに平和に暮らしていたのに、なぜ騒動が多いんだろう。
じぇ:もともと騒動が多かったんじゃないですかマスターの周辺は。でもこれまではマスター持ち前の鈍感力で気がついていなかっただけで…。最近のマスターは、鈍感力が減ってきている気がします。
真鍋:まあ、以前よりは周囲に気を使うようになってきていることは確かだ。昔はコンピューター無しブルドーザーだったのが、最近はコンピューター付き一輪車みたいな感じだけど。
じぇ:一輪車って見たことないです。興味ありますが…。
真鍋:こんな感じだ…。最近見なくなったな。
じぇ:凄い、カッコいい。
真鍋:じぇーんの趣味はもうひとつ理解不能だな。じゃあ、朝食を食って橿原神宮に参拝してくるよ、ここは神武天皇を祀った、日本の原点みたいな神社だから。心して参拝しないといけない。まずは、風呂に入って…。
風呂に入って身を清めて、朝食会場でもらってきた、茹で卵用の塩を全身にふりかけて身を清めるクリムゾン真鍋。
真鍋:しかし、凄いな、橿原神宮は。この荘厳さは、まさに日本の原点。ここから日本は始まったと言っても過言ではないな。明日香村には日本の心がたくさん詰まっている感じだ。
橿原神宮の威圧的な佇まいに感動するクリムゾン真鍋。
謎の人:おお、そこにいるのはプレジデント真鍋ではありませんか。お久しぶりです。
真鍋:(昔の名前で呼ぶとは、こいつは一体何者だ。)私は、今はクリムゾン真鍋だ。もう昔の名前で呼ばれても返事するのは最後にするよ。で、君は誰だ。
謎の人:昔はクルムシ二等兵と呼ばれていましたね、貴方に。もう15年くらい前ですが。
真鍋:おお、久しぶりじゃないか、クルムシくん、いまでも二等兵なのか。
クル:クルムシという名前は私が考えましたが、二等兵と決めたのはクリムゾン真鍋社長でしょう。
真鍋:じゃあ、せっかくだから、これからはクルムシ軍曹と呼ぼう。ハイドラGPでは随分と助けてもらったね。
クル:だいぶ忙しかったですが、楽しいプロジェクトでした。随所で開催されている格闘ゲームの店舗大会に勝手にポイントを付けて、商品と賞状をだす仕組みはなかなかうまく行きました。
真鍋:諸般の事情で、ハイドラGPは最終戦を行えないまま、活動停止してしまったのが残念だけど、HPはまだ残しているし、いつか再開したいものだ。
クル:賛成です、そうしましょう。
真鍋:で、なんでクルムシ軍曹は橿原神宮にいるんだ。まさか、クロニン軍団の手先になって私を監視に来たとか。
クル:クロニンってなんですか。それにもし監視に来たなら、こっそり隠れているでしょう。クリムゾン真鍋に見られるということは、隠れているわけではないと思うのですが…。
真鍋:そりゃそうだ、相変わらず気が利くよね、クルムシ二等兵、じゃない、クルムシ軍曹は。
久しぶりの再会に、昔話に花が咲くクルムシ軍曹とクリムゾン真鍋。
ゴゴゴゴゴ、グオ、ガギャン。轟音ともに、橿原神宮の駐車場でRX-7が現れる。
くる:あの音は何でしょうか。
真鍋:あれは私の友人のレーサー岡谷が来た音だな、なかなか楽しいヤツなので、クルムシ軍曹にも紹介するよ。
岡谷:真鍋はん、そろそろなんかしましょか。メンバー集めるために箕面まで行ってきたが、今日はあいにく、秋祭りの時期でな。みんな神輿を担いだり、神木を運んだりで忙しいんだ。メンバーに心当たりはないかな。
真鍋:まあ、時期が時期だけに、みんな秋祭りで忙しいよな。
岡谷:で、ワシの知り合いが、大学でロボットの研究をしていてな、そこで作ったロボット、それが、このパペポくんだ、これを借りてきたから。なんでも、麻雀の相手をするためだけに開発されたロボットらしい。
真鍋:それって、寿司屋の受付でテーブル番号を発券していたペッパーくんによく似ているんだが。
岡谷:まあ、近い存在ではあるよ。ペッパーくんって故障が多いから、胡椒になって、ペッパーくんという名前になったとワシは考えているが、このパペポくんは、ほとんど故障しないらしい。なんせ、麻雀することだけに特化したロボットだからな、故障が少ないらしい。
真鍋:負けそうになったら、麻雀卓ひっくり返してリセットする機能とか付いてないよな。
岡谷:パペポくんと麻雀するのは、実はワシも初めてだ。強いのか弱いのかわからんよ。
真鍋:まあ、岡谷さんより麻雀強い人は見たことないから、パペポくんといえども、岡谷さんには完敗するだろ。で、メンバー三人だから、今日は三人打ちでやりますか。
岡谷:ワシは三打ちはやらんよ、三打ちはインチキだ、麻雀はありありの4人打ちだ。
真鍋:そりゃ残念、あと一人見つかるまで、麻雀は保留ということで。
なんとかレーサー岡谷との麻雀を回避しようと無駄な努力を続けるクリムゾン真鍋。
岡谷:それは残念だ、あと一人なのにな。一緒に来ているメイドのじぇーんちゃんは、麻雀できないんでっか。
真鍋:じぇーんは、英語圏で育ったから、漢字ゲームの麻雀は無理だと思う、ポーカーとかブラックジャックならできると思うが。
岡谷:そりゃ仕方ないな。ちょっと、トイレに行ってくるよ。すぐに帰ってくる。
化け物のように強いレーサー岡谷と麻雀をしなくてすんで、ホッとするクリムゾン真鍋。
くる:社長、僕、麻雀できます。麻雀格闘倶楽部で練習しましたから結構強いですよ。
真鍋:ダァ~、シ~ッ、余計なことを言うんじゃない。君は岡谷さんの恐ろしさを知らないからそんな気楽なことが言えるんだ。岡谷さんに聞かれたらどうする。
岡谷:クルムシさん麻雀できるのか、それは好都合。ぜひお手合わせしてもらいたい。
真鍋:なんで、そんなに早くトイレから帰ってこられるんだ。おかしいじゃないか。
岡谷:ワシの陰でこそこそ密談をしている真鍋はんの気配を感じたから、トイレは先送りにしたよ。やはりワシの直感は当たっていたようだ。地獄耳はワシの特技の一つだ。
クル:社長、まあいいじゃないですか、久しぶりに社長と会って、明日香村で麻雀できるなんて、よい機会ですよ。
岡谷:クルムシさんは、良い面構えをしている。きっと立派な雀士になるだろう。ぜひともお手合わせ願いたい。
クル:褒められると気分いいですね。さっそく始めましょうか。
岡谷さんの恐ろしさを知らない脳天気な人はいいな、なんて今日は不幸な日なんだ、ぶつぶつ。
岡谷さんが勝ったら、私はマスターのところを退職して岡谷さんに雇ってもらおうかな。
偶然が重なり、橿原神宮で4人メンバーが揃ってしまい、クロニン軍団との抗争も三匹の熊の踊りのことも忘れて、午前中から麻雀をすることになったクリムゾン真鍋。勝敗の行方はいったい…。